2010/1/13 手術室では一段と元気になるProf [平日]

6:40 病院に到着する。ここの所、Dr.Tuの到着が遅いようだ。相変わらずの激務には変わりない。
7:00 遅れてやってきた。今日は3時間足らずしか寝ていないそうで、疲れ気味。何でも依頼された論文の執筆などをしていたそうだ。出来る人は忙しい中でもやりこなしてしまうものだ。
8:00 Op室に出向く。麻酔導入前に患者(2部屋並列になっている)に顔見せをしてから、ゆっくりと朝食を食べ始めるいつものスタイル。こんな感じでずっと仕事し続けているのだ。行動パターンを決めていいることも、ルーチンワークとして効率良く・抜けがないように行う重要なことなのかも知れない。
8:40 1例目は腰椎圧迫骨折のvertbloplasty。これは覚えて帰っておいても損はない。ただし、正面・側面を同時に見られるイメージがあった方がかなりやり易い。これがあれば本当に誰でもできる手技である。治療効果も確実。日本でも症例は幾らでも眠っているだろう。急性期に行うことはまだ議論の分かれる所かも知れない(骨セメントのリークなどの問題など)。今回の症例も受傷後2日で刺入したpedicleのニードルから出血が比較的多く見られた。
9:40 Rotator cuff tear (partial)の症例に対して、acromioplastyとsynovectomyを行う。T字切開で展開。三角筋をsplitしてsubacromial spaceに到達。滑膜炎というより滑液包炎が起きている。Acromioplastyを骨ノミとサージエアトームを用いて行う。用指的に剥離して十分なspace出来たことを確認する。その後にgentleにmaniplationを行っていく。外旋制限が強かったが、徐々に改善。挙上も160°程度までは簡単に行くようになっていた。
11:00 2例目のRotator cuff tearの手術。この症例は高齢者で上腕骨大結節部の剥離骨折(棘上筋付着部)も伴っていた。手技的には先ほどと全く同じ。ただし、最後に剥離骨折に対しては、エチボンドを用いて2カ所で8の字のtension band wiringで縫合しておいた。
11:35 少し早いが昼食を摂りに向かう。弁当はたいがい3種類あり、既にポークがオーダーされていた。みんなで和気あいあいと食事を行った。
12:20 午後の1例目は3椎間4segmentの脊椎後方固定である。今日も参加させてもらう。流れ作業で、それぞれが役割をこなし、次から次へと進んでいく。1時間20分で閉創。凄いとしかいいようがない。椎弓切除とpedicle screw固定が早いのが一番の要因だが、全く迷いと無駄がない。使用インプラントは2種類のcageを使用しているのだが、尾側にはチタン製、頭側にはカーボン製を使用(会社との兼ね合いなどもあるよう)。保険上、pedicle screwとともに使用できる数に制限があるため、一番頭側のL3/4椎間にはcageは一つしか入れなかった。Pedicle screwも8カ所のpedicleのうち6カ所しか使用していなかった。
14:50 BPI+ACJ dislocationに対しての神経移植とACJ固定の予定。Clinicalには、手指機能は保持されており(C7・C8・Th1)はintactと考えていた。まずは、短時間でフックプレートを用いて固定終了(Mr.シーがscrew固定したりしていた)。Imageは使用せずに行う。続いて、鎖骨上の腕神経叢の展開へと移る。ここの解剖も何度か見たのでだいぶ頭に入って来た気がする。Omohyoid mucleをretractして瘢痕化しているfascia様組織をcutすると、fat tissueが現れる。もうその周囲にはrootが存在するはずだ。Supra scapular、C5・C6・C7と展開していく。癒着・瘢痕化が強い。引き抜き損傷の存在が示唆された。C5 rootは剥離展開すると、neuromaを形成。電気刺激でも全く反応なし。C6も同様であった。C7はclinicalには保持されていると考えていたが、刺激でも全く反応を示さない。おかしいなと思いつつ、休憩となる。
15:30 コーヒーブレーク。電話で誰かに買い出しに行ってもらい、コーヒーとパン類をみんなでつまむ。他の手術室では足関節痛に対する腓骨筋腱鞘の切離、denervation予定の患者が搬入されており準備中だった。麻酔導入前にしっかりと顔を出すのは忘れていない。
16:00 再開。筋弛緩の影響もなくなっているハズだったが、やはりC7は刺激しても反応せず。従ってC7も損傷されており、臨床的に手指伸展などC7機能が若干可能だったのは、cross section、anatomical variationのためだろうと考えられた。C7がintactであれば、同側C7の前方線維のみを利用してSuprascapula nerveに移植しようとも考えていたようだ(前医による手術のため、Spinal accessory nerveの機能が損傷されているかも知れなかったので)。しかし、こういう状況ではC7は使用できないので、spinal accessory nerveを展開しcheckすることとする。やはり瘢痕化しており同定困難であったが、神経刺激を使用することで僧帽筋の収縮(肩すくめ運動)が確認される。その方向を頼りに更に深層へと展開をすすめた。しっかりと神経を剥離して遠位側をSSp nerveと縫合できる長さで切離する。続いてSSp nerveの近位側で切離し、omohyoid muscleの下面を通して、互いを神経縫合する。一連の流れはだいたい理解できるようになった。ルーペのみで10-0ナイロンで5-6針縫合し終了となる。
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16:30 他の部屋でDr.許が準備して待機している、ankleの症例の方に移動する。Dr.Tuがやってくるまでただひたすら待っている。TKAやTHAなどルーチン手術は、Dr.許だけでしてしまうが、unusual caseは手を出せないようである。早速急いで始まる。腓骨遠位の緩いcurved incisionで展開し、短・長腓骨筋腱を露出。同部の腱鞘がかなり肥厚しておりtightであった。まずはこれらをreleaseしていく。軽いsynovitisも見られる。しっかり遠位・近位ともに切離すると動きがsmoothとなる。更に、subtalar joint上に存在するnerve周囲にeffusionを認め、同部での炎症が示唆される。このnerveをdenervationするとのこと。手技的には難しくないが、診断することが難しく重要なのだと思う。その後、腓骨筋腱の脱臼防止のために、人工靱帯を使用してpulleyを作成しようとしたがbulkyとなってしまうため、長腓骨筋腱の1/4程度の太さを採取して、それをpulleyとして使用することとした。色々なoption・variationを知っていれば、様々な局面(トラブルシューティングなど)に対応できると思われる。
17:40 本日最後の手術である、母趾基節部の皮膚 壊死に対する皮弁術だ。骨折に対しては受傷時にK-pinで固定がなされていた。壊死組織を除去すると皮下の静脈の血栓形成もあり、やや深い。人工真皮で肉芽をあげて植皮という方法も勿論ない訳ではないが、cost・時間の浪費という点では局所皮弁でカバーできるのであればそちらの方が良いかも知れない。基本的には血流の良い組織で覆ってあげるということが重要なのである。足背の1st DMA による逆行性回転皮弁を予定した。多くの選択肢があるが(その他はkite flap、前腕などからのfree flap・・)、この症例に対してはbestなのかも知れない。しかし、解剖学的変異を知っておかねば、挙上・展開は容易ではないかも知れない。DMAによる血管茎は背側が70-80%ということであるが、10%程度は底側からという症例もあるそうだ。両者の混在型もあるようだ。おの症例は血管茎が結構深く、底側からか?とため息が出たが、どうやら両者の混在型であることが解り、ほっとする。底側からの茎はヘモクリップで結紮する。軟部組織付きpedicleで欠損部をカバーできるように剥離を進めた。また、pivot pointでは圧迫や捻じれが加わらないように充分に注意する。
IMG_4146.jpg Skin paddle採取部は一次縫合不可能なので、露出した腱を軟部組織でカバーした後、同部を分層植皮(下腿遠位外側より)し、tie overする。露出した血管茎・軟部組織部には軽く植皮をするのみで圧迫は行わなかった。 18:50 手術終了。今日も良い経験が出来た。このようなflap手術を自分は好きかも知れないと改めて思った。スーパーマイクロ・ウルトラマイクロの世界は技術的に限界を感じるが、この種の手術は経験とイマジネーションが必要で、かなりやりがいを感じる気がする。Dr.Tuに手術所見をコピーさせてもらうため、暫く手術室でみんなとだべりながら待機していた。スタッフにとって手術も終わってほっとする時間帯なのだろう、みんなかなりリラックスしている。 19:30 地下の食堂に夕食に向かう。今日は水餃子+肉ソボロ飯とした。醤油の味がイマイチかも知れない。ラー油みたいなのは美味いけれど。 20:00 医局に戻って今日のまとめなど。相変わらず医局に人影は殆どない。Dr.Tu以外(レジデントも含めて)は結構早めに帰宅してしまうのであろう。 20:30 帰宅する。
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