2010/03/13 ラストデー!手術も今日で見納めとなる。 [土曜日]

6:45 最終日の出勤もいつも通り。Dr.許、Mrs.ティンと教授が来るのを作業しながら待つ。もうこのスタイルにも慣れて来た。彼女はもう5年以上も続けているのだ。
7:20 最後の回診が始まる。少し遅めであるが、恒例の土曜日の講義は出席だけしておく(カードを通すのみ)ようで余裕があるのだ。本日の手術はさほど症例を入れていない。いつも多い脊椎や人工関節ではなく、外傷・手の外科症例が組まれている。私の最終日ということで配慮してくれたのだと思われる。本当に有難い限りであった。
8:20 講義室に寄って、退席のカードリーダーを通した後(学生の講義の出欠確認みたい)、いつもより少し遅めに手術室へ。Floraが買ってきた朝食を一緒に食べる。最終日もハンバーガーにしてくれた。教授の好物だが、私も嫌いではない。
8:50 今日の手術は全て手洗いして参加させてもらう予定だ。1例目は脊椎の後方固定である。教授の素早い手技はだいぶ理解できた。電メスを有効に利用すること。動きを止めないこと。両側とも外側まで充分に展開すること。などが始めの段階でのポイントであろうか?あとは椎間板腔へのケージ設置、pedicleの位置を適確に把握しscrewをしっかりと素早く刺入していくこと。である。自分でやる積りで参加しないとこの種の手術は参加しても面白くない。今回は自分でも今後する積りで積極的に参加してみた。自信はある程度ついたように思う。
10:35 この列の2例目はcongenital handの症例で前回も経験したradial club handである。しかし、今回の方がより程度が激しい。軟部組織は前回同様、Wartenberg flap(biloblar flap)にて橈屈している手関節を尺側へ戻し正中位とする。当然、尺骨長を調整した上で行う訳であるが、解剖学的なメルクマールがanomalyの場合は非常に解りづらいのが特徴だ。この変形を正中に戻すと橈側の腱は短縮し、尺側の腱は弛緩することが予想される。これらの微調整は実際に行ってみながらやっていくことになる。尺骨遠位端をcutしたこともあり、橈側の腱は延長することなく、尺側の腱のみplication(腱を縫縮して短縮させる)行った。手関節を正中位に保持するためには、K-pinを手根骨指摘位置より遠位側に向かって刺入し(3本)、いったん中手骨頭MP関節部に出しておき、retrogradeに尺骨髄腔内に向かって刺入していく。手関節やや背屈・橈尺屈中間位で固定できるように微調整を行う。簡単そうに見えるが実は難しい手技と思われる。しっかりと固定されたことを確認した後、軟部組織のカバーにとりかかる。2つのflapはそれぞれ血流が良く、近位側から穿通枝が皮膚へ伸びていると思われた。若干皮膚を修正しながら縫合していく。ポイントは2つ目のflapの方を大きく(長く)デザインしておくことだと思われる。良好な術後出来上がりとなる。この種の手術も芸術的で面白いと感じてきた。
12:30 昼休憩となる。いつもの弁当を感傷に浸る間もなく頬張って食べる。午後は教授の外傷症例が続いているので興味深い。最近、自ら外傷症例を扱うこともなくなっていたため是非見ておきたかった。
13:20 上腕骨開放骨折後に創外固定を設置し、軟部組織欠損に対して局所皮弁を行った症例に対して、創外固定器抜去、MIPOによるORIFを行う予定だ。上腕骨のMIPOは実際に見たことがなかったので非常に興味があった。侵入は前内側アプローチで近位はbiceps筋腹を内側にretractして(musculocutaneous nerveもmuscle bellyごと一緒に内側へ)、遠位はbrachialisを内側にretractして上腕骨に至る。思ったよりも簡便なアプローチであることが解った。皮下トンネルの作成もDr.Tuオリジナルのような手技で(筋肉移植の際に皮下トンネルを作成するような感じ)行っていく。Plateはヒモで遠位側に引っ張るようにして設置する。Imageは一切使用せず、screwを順次固定していく(近位・遠位3穴ずつscrew hole使用、骨折部付近にてbendingを軽度行った)。全てbicorticalで固定して、いずれも固定性は良好であった。術後のXp checkがないために出来上がりが不明であるが、きっと自信はあるのだろう。
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14:50 続いて、下腿開放骨折術後軟部組織欠損に対してGlacillis muscleのfree flapを行った若い女性の創外固定抜去、MIPOによるORIF症例である。先ほどの症例に続き、この研修期間でいずれも比較的長期にfollow upさせてもらった症例だけに愛着深い。下腿のMIPOは自分でももう何例も行っていたものの、教授のやり方を見てみたかった。実際みさせてもらうと、極めてシンプル・オーソドックスなやり方で行っていた。conventional用のscrewが何故か準備されておらず、滅菌を待つことになる。その間に先にロッキングスクリューで仮固定をしておいた。一つ一つの作業は適確である。教授はこの種の手術を実際にすることは少ないが、やれば凄いのだ。
16:00 コーヒーブレイクとなった。いつものように菓子パンも付いている。最後の手術に向けて気合いが入ってくる。
16:20 本日最後の症例は、舟状骨偽関節?(嚢腫様変化あり)に対する、2,3ICSRAを利用した血管柄付き骨移植術であった。この症例は最終日に準備してくれたものであるが、正直言うと私のために無理にsettingしてくれたのではという感じが伝わってくる。本当に申し訳ない。心して参加させて頂くこととする。本日もデジカメ片手に時に動画を撮影し(特に血管茎の挙上については重要だと思ったのでしっかりと)、画像におさめた。Dr.Tuが執刀すると簡単に見えてしまうのはいつものこと。解剖をしっかりと頭に叩き込もうと誓った。日本でもfresh cadaverを使ったトレーニングを導入していきたいという思いが強くなってくる。今日は偽関節部まで移行させるのに、始めpedicleの長さが足りなかったため、1st compartment部の腱鞘を切開し、pedicle長を長くとるように工夫して展開した。充分に足りることを確認した(手関節を背屈にし、EPL・EPB・APLの腱の下を通すようにする)。骨内嚢腫様変化部をエアトームで削って、移植骨を充填する。固定は前回同様、AO 1.5mm screwを用いていた。この小さな骨片に対して血流を損なわずにscrew固定することはピンポイントで一発勝負である。やり直しは利かないだけに難しいと言える。いろいろなエッセンスの詰まった手術手技も終焉に向かっていく。自分ではこれが最後なんだという思いが強くなってくるが、周りのスタッフはいつもと同じように淡々と進行している。
17:30 手術は終了となり、片付けを行っている最中に記念撮影を行ったりした。Mr.シーとのツーショットも貴重な一枚かも知れない。ここ義大病院での生活の中で手術室で過ごした時間が一番長かっただけに感慨もひとしおである。一仕事終えたな~という安堵感があった。
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18:00 今日は比較的早くに病院を後にする。これから市内でささやかな送別会を開いてくれるのだそうだ。台湾最後の晩餐ということである。台湾の伝統料理を風情のある場所で堪能できると聞いていたので楽しみだった。
18:40 少し遅れて出たはずのMr.シーが既に店の前で待っていた。Dr.Tuを尊敬している様子が彼の行動全てをとってみてとれる。そのような師弟関係の人物ができるような医師を目指さなければならない。店は台湾の古き時代の街並みを再現した造りの非常に風情のあるレストランだった。日本の統治時代だっただけに、昭和初期を感じさせるレトロな建物、品々が店中に溢れかえっている。店員の格好も昔の学生に扮していて楽しめた。
19:00 参加者は、Dr.Tu、Flora、Mr.シーに加えて、Dr.顔、Dr.葉も加わってくれた。先日の飲み会に参加出来ていなかったこともあり、駆けつけてくれたようだ。Dr.顔はお土産にということで、亜里山のお茶をくれた。Dr.葉がいつものように取り仕切ってくれ、メニューをどんどんオーダーしてくれた。この2人のドクターは、Dr.Tu寄りのスタッフというか、性格的にDr.Tuが扱いやすい人のようで気心も知れている様子である。
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19:40 途中、Floraが店内を案内してくれ、一緒に写真撮影を行ったりした。彼女にも本当にお世話になった。今度、岡山にやって来た時はしっかり接待してあげなくてはならないだろう。
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20:20 料理は非常に美味しかった。ガーリックが効いており、味付けは好みである。また、ご飯の上に肉汁のようなものをかけて食べるスタイルは美味しいのだが、カロリーが気になる所だ。
20:40 楽しかった宴会も終了となる。Floraは教授が送って帰ることになり、残りのメンバーで台湾の伝統的な足つぼマッサージ屋に行くことになる。全身のマッサージも良いところがあるらしいのだが、満腹の体ではちょっと大変だろうということで、足だけの所になった訳だ。
21:00 清潔な感じで少々高級そうな店に案内してくれて、4人でマッサージを受ける。私の担当の男性は日本語が少し話せたので面白かった。しかし、始めは痛かったものの徐々に慣れてきて途中はウトウトしてしまっていたようだ。2か月あまりにわたる研修の疲れが取れていくように感じて行った。とてもリラックスが出来て良かった。
22:00 Dr.顔が病院まで送ってくれることになった。こちらの人はもてなす人を1人で返すようなことは決してしないようである。でもDr.Tuの周りの人間だったからなのかも知れない。
22:30 こうして台湾最後の夜は過ぎて行った。楽しい思い出もいろいろと有難う!

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